他律神経の日記

犬が好きです。

2021年6月25日-2021年7月2日 記憶の否定は忘却だが、日記の否定はまた日記だ

 2021/06/25

 金曜日、晴れ。労働、昼から。

 労働強度は低かった。やることがなくて消耗したくらいだ。忙しい時には忙しいが忙しくなくても労働している振りを要求されるのでしんどいと思った。こうやって、よく考えると無意味なことに本当に消耗しているのだろう。こういう消耗が積み重なって、人は死ぬことになるのだろう。

 

 

 2021/06/26

 土曜日、晴れ。労働、昼から。

 これを書いているのが2021/07/03だから正直に言って天気のことなど覚えていないのだが、先週の労働日はあまり傘をさした記憶がない。労働強度はこの日も低かった。オフィスに誰もいないので労働しているふりをやめて、資格の勉強などしていたが、そうしたら先輩が近寄って小声で話しかけてきた。この秘密の話をしようというジェスチャアも気持ち悪いが、この後も本当に気持ち悪くて、そのせいで私は今日までこの日記をすら書く気になれなかった。彼によれば、私はまさに資格の勉強をしていることにおいて、評判が悪くなりつつあるということであった。スマートフォンを触っている連中は目立たないが書籍を持っていると目立つということであるらしい。レイバーは相互監視をしている間に何もかも奪われていく。あまりにも馬鹿らしいのでもう話をする気にもなれなかった。それから、いわゆるパワー・ハラスメントで「消された」前任者たちの話を聞かされた。それが彼の、彼らの自慢なのだ。相互監視の成果だからだ。働かない奴をパワー・ハラスメントで消し去ったという自慢。もう本当に度し難いし、一生やっていればよい。仕事を辞めることを決意する。

 

 

 2021/06/27

 日曜日、晴れ。労働、夜から。

 昨日のこともあり、本当に気持ち悪くなり、昼はずっと横になっていた。こんな労働しか充てがわれないということが、既にして私の人生が終わっていることの証左だ。吐き気がする。身分の違う「シャイン」と、出世できずに留まり続ける「ベテラン」と私と新人の4人。シャインは統治のコストを払っていないので、非常に穏やかで人当たりがよい。それはそうだ。「無能」な人間は相互監視の果てに、部下たちが勝手に処刑してくれることになっている。彼は手を汚さない。雇用関係と使用関係が別々の会社に結ばれている者達の支配は、支配する者から心理的なコストをも取り払ってくれる。彼はクビにするがクビにすることはない。こんな労働形態が一般化、全面化しているなんて本当にどうしようもないことだ。吐き気しかない。

 

 

 2021/06/28

 月曜日、晴れ。労働、朝まで。また夜から。

 あの「先輩」の、ひそひそ話が私において呪いとして機能している。相互監視の網の目を物理的なもののように感じる。夜間の労働は、報告義務のあるものが多く、疲れ果てた脳を痛めつける。私はもう完全に壊れかけている。新人のおかげで助かったと感じている。若い人たちは本当はダメージを負っているのかも知れないが、ダメージを負ったような素振りを見せない。とても凄い。私はもう若くない。これは余生だ。帰宅後、風呂に入らずに眠る。風呂に入る気力がない。起きて入浴する。母が出かけており、犬と過ごす。出勤直前、駅まで犬と母を迎えに行く。母の姿を遠くに見ただけで犬が鳴き始める。ワンワンではなくキュウンキュウン。泣き始める。車から飛び出して事故りそうで怖かった。母を家に置いてから出勤。「ベテラン」がいない。私はこんな流動性が高い労働市場をどうかと思っているが、そういう慣例に逆らって長く留まっている人間もどうかとは思う。傷つけられた魂を癒やすために他人を傷つけたがるようになる。愚劣。

 

 

 2021/06/29

 火曜日、曇り。労働、朝まで。また夜から。

 労働強度は低かった。新人のおかげだ。一部、新人と作業を実施。何故みんな急ぐのかわからない。帰宅後、風呂に入る。風呂に入ると目が覚めてしまい、日光もあってよく眠れなくなる気がする。期間工をしていた人のブログによるとどんなに疲れていても風呂には入ってから寝たほうがいいらしい。収容所文学と同じ結論。労働市場は巨大な収容所だ。囚人頭の待遇は相対的に良いものであるらしい。母がワクチン接種に行ったので、その間、犬と寝て過ごす。母の帰宅後、自室で眠る。起きて労働へ。あのひそひそと話す男と労働。

 

 

 2021/06/30

 水曜日、雨。朝まで労働の後、「休日」。

 労働強度はそれなりに高かった。細かく色々とやることがあり、神経を摩耗した。こういうことを夜間にやるから脳がおかしくなり、魂を傷つけられ、それを癒やすために他人を攻撃することになる。そしてこれは必ずしも、私の、この場所でだけ起きていることではないだろう。ここは24時間社会だからだ。エッセンシャル・ワーカーと煽てられた者たちを燃料にする社会だからだ。労働後、自宅最寄り駅の喫茶店に入る。私はいわゆる「自粛」などするつもりはない。もともと社交的ではないし、外食や外出を好まないので、常に「自粛」しているような状態ではある。しかし、どのみち労働のために外へ出なくてはならないのに、何を自粛することがあるのか? この国ではウイルスは労働中には感染しないと考えている者が少なくない。吐き気がする。この文明は完全に腐敗している。「自粛」も「新しい生活様式」も、レイバーには何の関係もない。帰宅して風呂に入り、18時近くまで眠る。

 

 

 2021/07/01

 木曜日、曇り時々雨。休日。

 昨夜、早く寝たにも関わらず、また10時近くまで眠る。眠くて眠くてどうしようもない。いかに普段、眠ることができていないか。労働時間のために意識のない時まで操作されている。不断の緊張は不断の緩和と同義だ。猛烈な精神の劣化。腑抜けていく。昼にサンドイッチを食べる。犬と近所の公園へ散歩に行く。よく歩いた。帰宅中、雨が降ってきた。散歩時間を確保するのが大変だ。帰宅後、犬と寝てる。食事を摂る。横になる。終わり。犬がいなかったら永遠に横たわっている。生活が壊れてきた。不可逆的でないことを祈る。

 

 

 2021/07/02

 金曜日、強い雨。労働、朝から。

 不眠のまま、労働に出る。概日リズムが崩壊しているので仕方がない。概日リズムが崩壊していると労働に支障が出るが、この労働は概日リズムを崩壊させなければ実行できない。通勤電車は行きも帰りも気絶していて記憶がない。労働強度は低い。助かった。安堵する。眠くてどうしようもない。帰宅後、犬と遊び、食事を摂り、眠る。