他律神経の日記

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the Memory of Mankind archive(MOM):  大忘却の3つの理由

 人類の記憶(MOM)プロジェクトが自分自身の存在意義を説明するために、現代の人類文明に、彼らの言うところの「大忘却(Big Oblivion)」が発生する3つの理由を述べている。これらはそのまま、人がアーカイブを、あるいは「歴史する」ことを組織する時の理由の、1つの具体例であり、貴重なサンプルである。

 ところで、人類の記憶(MOM)プロジェクトとは何か。それは現在の人類文明に関する知識を忘却から救い、保存することを目的とした保存プロジェクトである。 2012年に始まったこのプロジェクトでは、セラミックタブレットに情報を印刷し、オーストリアハルシュタットにある塩鉱山に保管している。MOMプロジェクトは、このプロジェクトの目的を、特にデジタル情報の時代において、重要な知識や情報が失われないようにする方法として(すなわち大忘却に備える方法として)、私たちの時代の物理的な記録を残すことと説明している。 タブレットは何千年も使えるように設計されており、人類の知識のスナップショットを後世の人々に提供する。このプロジェクトはまた、タブレットを保管する権利を購入することで、個人が個人的な思い出を保存する機会も提供している。

 大忘却は以下の三つの理由で生じる。まず、今日、インターネットの急速な拡大に伴い、34億人がオンラインでデータトラフィックを生成し、これがエネルギー消費と二酸化炭素排出の主な原因となっている。データトラフィックの増加は18か月ごとに2倍になり、将来10年間で現在の50倍以上になる見込みである。これにより、インターネットはすでに世界の炭素排出量の3%を占め、将来的にはデータの大幅な削減が生態学的および経済的理由から避けられなくなるかもしれない。

 次に、クラウド利用者が死亡したりして「存在を終了」すると、その費用が払われなくなり、幾度かの未払いの後にクラウド上のデータが削除される可能性があるが、このためにクラウド上にある現代のブログや科学的な成果は将来の歴史家にとって貴重な情報源となり得ないことになる。

 最後に、情報の洪水により正確さが損なわれるという事態がある。古代の文書が1%未満しか残っていないのとは対照的に、今日では文書の公開は容易であり、疑似科学が広まる傾向があり、様々な冗長なたわごと――例えばこのブログのような――に貴重なデータを量で圧倒している。これにより、未来の歴史家たちは真実を見つけるのが難しくなり、彼らの現代についてのイメージが完全に歪んでしまう。

 以上、大忘却の三つの可能性をプロジェクトの記事からまとめたが、これはいずれもインターネットの登場で生じた問題と言うことができるだろう。

 

参考資料

Three reasons for the Big Oblivion - Memory of Mankind